2025年11月19日

子どものやる気を引き出す 親のアプローチ


恒例となりましたが、マネジメント・ブレイン・アソシエイツ様発行の「子供のやる気を引き出す 親のアプローチ」を転載させて頂きます。

保護者の方々にも何かの気づきの一つにして頂ければ、これに勝る幸せはございません。

出典:

マネジメント・ブレイン・アソシエイツ発行

「子どものやる気を引き出す親のアプローチ」

 

☆勉強する意味を考える! ☆

◇皆さんは、こんな質問をお子さんから受けたことがありませんか。
「なんで勉強するの?」、「なんで勉強しなきゃいけないの?」、
「どうして勉強なんか必要なの?」等々。

 

◇私は、塾の先生を17年やっていたので、この手の質問が年間数十件から数百件も生徒たちからされました。
先述の質問の表現が違うように、生徒のその質問(=疑問)の奥にある悩み事も、一人ひとり違うので、幾通りもの答えを用意し、生徒の勉強に対するモチベーションを上げるように話しました。

 

◇しかし、私の基本スタンスは、表現や事例は違っていても一つです。
それは、今やっている勉強は、社会に出た時の練習なんだということです。
子どもを大人にする一つの訓練が学校の勉強なのです。

 

例えば、大人になって勉強しないと、社会に置いていかれて大変なことになるのですから、子どものうちに勉強するということの練習をしておくことが必要なのです。

 

また、人間は社会的な動物ですから、他者を理解すること、自分を理解することが必要になります。
勉強は、初めて出会った事柄を理解する練習になるのです。
分かりにくいことを理解しようとすることが、他者理解の練習なのです。

 

他人が書いたものを理解する、これも、学校で初めて習うことになります。
他人を理解するためには、学校の勉強は、格好の機会を創ってくれるのです。

 

また、子どもは好きなことをすることが許されますが、大人は、その前に、自分の義務を果たすことが求められます。
自分のやるべきこと=自分の課題に向き合う力をつけることも勉強をやる意味なのです。

 

◇最後に、私が私立高校の理事をしていた時に、夏休み中の講習で国語の授業をした際、なぜ国語を勉強するのかを生徒たちに話したことを書いて今回は終わりにします。

 

中土井:このクラスで国語が好きな人?えっ!誰もいないの?

じゃあ、国語が嫌いな人?えっ!そんなに嫌いなの!困ったな。

難しいから嫌いっていう人?ほとんどそうなんだ。難しいと思っているんだ。

国語は、難しいよな。先生も学生時代は苦労した。でも、国語って難しいもんなんだよ。

そうしないと、役に立たないんだ。

他人の気持ちって、なかなかわからないだろう。

国語は、他人の気持ちを分かるようにするための訓練なんだ。
だから、易しいと現実的な役に立たないんだよ。だから、難しくしてるんだ。
でもね。他人の気持ちもその人とじっくり話をしたらわかってくるだろう。

 

国語も同じなんだよ。じっくり読んでいくと、一杯ヒントがあって、
段々わかってくるんだ。君たちは、まだそのヒントの見つけ方が
分かっていないだけなんだ。

 

だから、この講習で、そのヒントの見つけ方をするから、
そうすれば、他人の気持ちもわかるようになるよ。
国語を勉強するって、他人の気持ちを理解するための練習なんだ。
さあ、練習しよう。

『勉強する意味を伝える!!』

 

 

☆叱ることに留まらないで、正しいことを教える!☆

 

◇子どもが悪いことをしたとき、私たちは、叱ります。しかし、叱るだけでは、子どもは、悪いことの反対の良いことを学ぶことはありません。
悪いことをした!と自覚はするかもしれませんが、どうすれば、または、何をすれば、良いことになるのかを明確に示されないのです。

 

◇ですから、叱ることと正しいことを示すことをセットにして、子どもと向き合うことです。また、何でそれが正しいことなのかの意味をしっかり教えることです。

 

◇また、子どもが悪いことをして、それを叱る場合、子どもがどうしてその悪いことをしたのか、色々な可能性を創造しながら叱ることです。
例えば、子どもが勉強しないでゲームばかりしている場合、「勉強しなさい!」と一喝するだけではなく、もしかするとA君は、勉強しても、わからないことばかりで、辛い思いをするから、勉強に向かわないのかも知れない、と思いながら、子どもと話をすることです。

 

◇つまり、問題行動を叱るということは、その問題行動の原因を解決するために、「勉強の意味」や「わからないことが出てきたらどんな対応をしたら良いのか」ということを教えることとセットでなければならないということなのです。

 

◇子どもは、大切な他人(=親や先生)の関心に沿って行動します。
親や先生が、日頃の子どもの多様な行動の中から、発見した望ましい行動に注目して、承認をしっかりしていくことです。
そうすれば、常日頃から望ましい行動を学ぶことができるのです。
子どもの行動を叱るときは、正しい行動とその意味をしっかり子どもに伝え、そして、日々子どもの望ましい行動を親が承認することことです。

 

『叱ることに留まらないで、正しいことを教える!』

 

 

☆子どもを甘やかすということは、子どもの課題を取り上げること!☆

 

◇過保護と聞いて、どんなイメージがわきますか?多くの方は、「子どもを甘やかす等々」という印象があるのではないでしょうか。つまり、親の態度が、子どもの「言うがまま」を受け入れるというイメージです。
子どもを甘やかす対応は、躾として好ましくないことも想像できるでしょう。

 

◇「甘やかし」は過保護の典型ですが、過保護とは、
「本来、子どもが解決しなければならない課題を親が引き受けてしまう態度」をいいます。

 

母:もうすぐ期末テストなのに、勉強しなくていいの!?

 

子:今やろうと思っていたのに…。やる気がなくなっちゃった。

 

母:いつもそんなこと言って…。また点数が悪くても知らないわよ!

 

子:うるさいな~。

 

母:いつも、そう言って最後に慌てて、泣きついて来るんだから。お母さん、今度は知らないからね!

 

子:別にいいよ!!

 

◇勉強するか、しないかは、子どもの課題です。それに対して、親がこの例のように無造作にかかわると、親子の人間関係が悪くなるばかりか、親がいつでも忠告をしてくれることを子どもは学びます。もしかしたら、良い点数が取れない時に、親のせいにしてしまうかもしれません。

 

◇上記のような態度も過保護の一種と考えられます。つまり、甘やかすということは、子どもが自身の課題と向き合う機会を奪ってしまうリスクがあるのです。
全く関わらなければ、結果を子ども自身が引き受けざるを得なくなります。

 

◇それでも親として全く関わらないわけにはいきません。
そんな時は、Iメッセージをつかっていただきたいと思います。

 

母:もうすぐ期末テストだし、お母さんとしては、もう少し勉強した方がいいと思うんだけど。

 

子:うん、わかってる。

 

母:わかっているのに、勉強が進まないのは、何か不安なことがあるの…?

 

子:不安っていうか、わからないことだらけで嫌になっちゃうんだ

 

母:そうなんだ。お母さんとしては、仮にテストまでに完璧にならなくても、わからないことを一つずつわかるようになって欲しいのだけれど…

 

子:でも、それじゃ間に合わないよ!

 

母:確かにね。焦る気持ちはわかるけど、(お母さんとしては)今のままでは、一歩も前に進めないんじゃないかと思うのだけれど…

 

子:そりゃ、そうだけど…

 

母:結果は結果として、(お母さんとしては)一歩でも前に進んで欲しいのだけれど…。
まずは、学校の先生でも、塾の先生にでもわからないところを聞いてみたら?

 

子:そうだね。先生に質問してみるよ。

 

◇日頃は生意気なことを言う子どもでも、本来の自分の課題に向き合う方法については、まだまだ未熟なものです。親が子どもの課題に口をはさむときには、Iメッセージを使って、自分の課題に向き合うようにしてみてください。
親子関係を悪化させることなく、子どもが自身の課題に向き合えるようになると思います。

 

『子どもを甘やかすということは、子どもの課題を取り上げること!』

 

 

☆子どもの気持ちを引き出すような環境を作りましょう!☆

 

◇お母さんやお父さんが、子どもをいつもいつも叱っていると、子どもは自分に自信が持てなくなるので、失敗を恐れ、何事に対しても臆病になっていくものです。
そんな子どもを私は、随分と沢山見てきました。

 

◇先日もあるスーパーでこんな会話をしている親子を見つけました。
その時の子どもも、自分に自信のない子のように見えました。

 

お母さん:「何が欲しいか言ってみなさい。」

 

子ども :「え~・・・。何がいいかな?」

 

お母さん:「これはどう?これがA君には良いと思うわよ!」

 

子ども :「え~・・・。お母さんがこれがいいって言うなら、それでいいよ。」

 

お母さん:「自分で選んでよ。あなたの欲しいのは、どれよ!」

 

子ども :「だから、これでいいよ。」

 

お母さん:「これで本当にいいのね!あとでブツブツ言わないでよ!」

 

子ども :「・・・。いいよ。」

 

◇このお母さんと子どものやり取りを見聞きしていて感じたのは、お母さんは、子どもに選ばせようとしているようで、結局は、お母さんの意向を押し付けているだけということです。

 

◇子どもは、母さんの顔色を見ながら、必死に自分の欲しいものを探そうとしていますが、お母さんの迫力に負けてしまって、結局お母さんの言うとおりにしてしまいました。
もう少し踏ん張れば、自分の気持ちを彼は言えたのに、とうとうお母さんに負けてしまったのです。

 

◇私が心配するのは、お母さんの無自覚さです。お母さんは、子どもに選ばせたように思っていますが、実際は、お母さんが何でも決めているのです。
きっと、この親子は、子どもがもじもじして、大体がお母さんが決めて、一件落着になっているはずです。

 

◇これでは、子どもの自主性は育たないものです。
こういう状況が読者の皆さんにもあるかないか、ぜひ、振り返ってください。

 

◇子どもの全てを何でもかんでも決めてしまう親であってはいけません。子どもの気持ちを引き出して、子ども自信が選べるような状況を考えてみてください。