2017年06月26日

子どものやる気を引き出す! 親のアプローチ


恒例となりましたが、マネジメント・ブレイン・アソシエイツ様発行の「子供のやる気を引き出す 親のアプローチ」を転載させて頂きます。

保護者の方々にも何かの気づきの一つにして頂ければ、これに勝る幸せはございません。

出典:

マネジメント・ブレイン・アソシエイツ発行

「子供のやる気を引き出す親のアプローチ」

 

☆ つらい経験を味わう! ☆

 

◇最近の子育ては、子どもに楽なこと、楽しいことを経験させることが、良いことだというような風潮があるように思います。また、子どもの自主性を尊重することが、大切なことだと思って、子どもに大切な判断を任す風潮があるように思います。

 

◇しかし、そういう風潮は、時に非常に危険性があるものです。成長段階にある子どもの、成長段階に応じた対応が必要なのです。ですから、子どもの成長段階をしっかり把握して、色々な対応をすることです。

 

◇子どもが、大人になっていく過程の中で、経験しなければならないことの中には、辛いこと、苦しいことをやり過ごすということがあります。「やり過ごす」というと、何か良い印象はありませんが、「乗り越える」では、意志をもって辛いことや苦しいことを克服するというニュアンスがあって、子ども時代はそんなに立派なことばかりができるわけではないので、「やり過ごす」を使いたいと思いますが、小さい時のやり過ごし方と、ちょっと大きくなってからのやり過ごし方は、やはり違っています。そんな意味もあって、「やり過ごす」を使いたいと思います。

 

◇表現はともなく、子どもに辛いことや苦しいことを経験させて、そういう思いをどうやり過ごすかを経験してもらわない限り、大人になってからが、大変になってしまうのは、予想に難くありません。先にも書きましたが、今の子育ては、大人になってから大変になってしまう子育てが、多いように思います。

 

◇子どもが辛いことや苦しいことに直面した時に、親としては、その辛さや苦しさを共感的に見守ってもらいたいのです。直ぐに助け船を出すことはないのです。「辛いのなら、やめていいんだよ」とか「あなたがやりたいって言ったことなんだから、あなたが続けるかやめるか決めていいんだよ」とか、そういう言葉を直ぐには使わないで、親も我慢してもらいたいのです。

 

◇子どもが苦しんでいるのを見るのは、親として辛いかもしれませんが、少し我慢して、見守ってもらいたいのです。子どもが、辛いことや苦しいことをどうやり過ごすかを見守っていてほしいのです。

 

◇子どもが、大人になる前に悲しい思いをし、辛い思いをし、苦しい思いをして、その思いの数々をやり過ごせるようになって、大人になっていければ、色々なことに対する耐性は、きっと身に付いていくはずです。子どもを大人にするために、辛い思いを経験させることも大切なことなのです。

 

『大人になるための苦しさを経験させる!』

 

 

☆ 積極的に素直なフィードバックをする! ☆

 

◇コミュニケーションの目的の一つは、相手のセルフ・エスティーム(自己重要感)を高めることです。特に、子どものやる気を引き出そうとすれば、子どものセルフ・エスティームを高めることが、どうしても必要なことです。セルフ・エスティームが高まれば、自分の可能性を信じることが出来るようになるからです。

 

◇しかし、親子関係では、その辺が、分かっているけれど出来ない、ということが多いのも事実です。それは、親の子どもに対する大きな期待や自分の分身としての子どもに対する気安さが原因で、ついついマイナスのストロークを取ってしまいがちになるからです。大人同士であれば、当然、こんな会話は出来ないなあと思っていることも、子どもとの間であれば、簡単に出来てしまう、それが親子関係です。

 

◇ということで、今回は、子どもに対するフィードバックについて書いてみたいと思います。子どもは、親に期待を寄せています。子どもは、親のフィードバックに期待しているのです。しかし、親はその辺を全く無視してフィードバックをしてしまうから、子どものセルフ・エスティームが高まらないのです。子どもの望むフィードバックを少しは理解して、親が子どもとコミュニケーションを取れるようになれば、子どものやる気は、当然高くなっていくはずです。子どもの期待する言葉をちょっと意識して子どもにかけてあげることです。

 

◇たとえば、家庭訪問の時に、学校の先生から、A君の評価をお母さんが聞いたとしましょう。A君もその場にいて聞いていたと。その評価は、良いものだった。さあ、お母さんは、どういえばよいのでしょうか。

 

お母さん:学校の先生が、あなたのこと褒めてたけど、本当なの?

A 君:どうかな?

お母さん:何かの間違いじゃないの?あの先生は、生徒のことをしっかり見て言ってるのかしら?

A 君:さあ、どうかな?

お母さん:まあ、褒められるだけ、ましかもね。頑張りなさいよ!

A 君:多分ね。

 

◇このやり取り、どうでしょうか。これはあまりにもひどい例かもしれませんが、これと似たり寄ったりのやり取りが、あるのではないでしょうか。これじゃあ、A君は、立つ瀬がないし、学校の先生に不信感が出来てしまうかもしれません。こんな時は、素直にA君を褒めてあげてください。

 

お母さん:学校の先生が、あなたのこと褒めてたけど、お母さん、嬉しかったわ!

A 君:へえ~。

お母さん:あなたもなかなかやるじゃない。学校では、お母さんのいつも言っていることをしっかりやっているのね。安心したわ。

A 君:さあ、どうかな?

お母さん:これからも、頑張ってね。お母さん期待しているからね。

A 君:期待しないでね!

◇A君が、望むフィードバックをお母さんは、心がけよう。これは、叱る時も同じです。A君が、受け止められるような叱り方を、A君が望んでいる叱り方なのです。私たちに重要なことは、相手に受け止められるコミュニケーションです。このことを忘れないようにしたいものです。

 

『積極的に素直なフィードバックをする!』

 

 

☆子どもの言語環境を意識する!☆

 

◇ものには言いようがあるとよく言われますが、子育てにも当てはまります。それは、子どもの言動に対しての親の言いようです。

 

◇子育ての言語環境は、その後の子どもの成長にとって、非常に大きな意味を持ちます。そして、大人になってどういう言語表現を使うかということにも影響を与えます。

 

◇たとえば、私のことで言えば、私は、横浜の下町のアパートで生まれました。四畳半の部屋しかなく、流しと便所は共同の、それこそ江戸時代に出てくる長屋のようなアパートだったのです。親父は、広島から出てきて、広島弁となぜか河内弁を使い、お袋は、佐賀県出身なので、九州弁を使って話していました。そして、周りの大人たちは、下町風の横浜弁を(つまり、上品な言葉ではない)使っていました。

 

◇そんな言語環境にいた私は、今でも講演などで、ガサツな言葉を使ってしまう時がありますし、日常的にもひどい言葉を使ってしまうことがあります。それが私にとっての日常になってしまっていたので、意識しない限り、ガサツな言葉がいまだ自然と出てきます。しかし幸い、私は、二人にとって年老いてからの子どもであったので、愛情だけはしっかり注がれました。「鉄信は、賢いから大人になったら何でもできるよ」なんてお袋からは、いつも褒められ、親父からは、「俺も頭が良かったからお前も大丈夫だ!」なんて言われて育ちました。親の声掛けが私の場合、大変良かったと今も思っています。

 

◇ちょっと話がずれましたが、子どもに対して、どんな表現で接するのかは、子どものその後を決定するかもしれないほど、重要なことです。であれば、少しは、親が意識して子どもに接する時の言語表現を良いものにしていくようにしたいものです。

 

◇その時に参考になるのが、リフレーミングという考え方です。たとえば、以下に同じ意味で、違う表現を書きます。

 

臆病────慎重

落ち着きがない────活発

元気がない────穏やか

無鉄砲────勇気がある

約束を守らない────おおらか/こだわらない

優柔不断────柔軟性がある

頑固────芯がある/信念がある

 

◇行動が良いのかどうなのか、性質が良いのかどうなのか、これは、自分が置かれた状況によって違ってきます。「元気がよい!」だけでは、良いのかどうなのかは、決定されません。運動場で「元気がよい」のは、OKだと思いますが、お葬式の場で「元気が良い」のは、NGです。物事は、状況とか環境で、良くも悪くもなるものです。そういう状況や環境を変えて、行動を見てみると、マイナスの表現もプラスになったり、プラスの表現もマイナスになったりするものです。こういう言い換えを時に応じて子どもにしてほしいのです。

 

◇また、こういう言い方も考えてほしいと思います。

「勉強しなければ、入試に落ちる!」

「勉強すれば、入試に受かる!」

 

◇どちらも同じメッセージですが、どちらが、言語環境としていいのか一目瞭然です。子どもを脅かしてやらせる言語表現と子どもを促す言語表現では、当然、後者が良いはずです。子どもが積極的になる表現を数多く使っていきたいものです。子どもを取り巻く言語環境を少し意識してみてください。

 

『子どもの言語環境を意識する!』